田端到・加藤栄の種牡馬事典 2013-2014
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ぼんやりと不機嫌な春をやりすごしていたら、今週はもうオークスなのだという。まいったね。このところ時の過ぎ行く速さがいよいよ加速している。ということは、来週はダービーじゃないか。まずい、資金を稼がねば。


さてそのオークス、人気はどんな地図を描くのだろう。やはり桜花賞組のアユサン、レッドオーヴァル、そして新興勢力のフローラS勢、デニムアンドルビー、エバーブロッサムあたり、つまりはディープインパクト軍団がその上位を占めるのか。今年のディープの3歳はイマイチ、なんていう声もあちらこちらから聞こえてきていたが、やはり締めるところは締める公算も大きいのだろう。年齢は異なるが、先日のヴィクトリアマイルのヴィルシーナもいいレースを強い勝ちかたで勝った。


しかし、へそ曲がりのぼくは、人気のディープ産駒に“すがる”のは、どうもまだ居心地が悪い。そこまで脂が抜けていない。やはりちょっとナナメから入ってみたい。キーワードはブライアンズタイムだ。


4月4日に急逝したブライアンズタイムの偉大さについてはあらためてここで書くこともないだろう。大王サンデーサイレンスがいたためにとうとうリーディング・サイアーの座に就くことはなかったが、幾多の名馬を輩出し、またしばしばSS産駒にひと泡もふた泡もふかせる刺客を送りだした、野武士のような種牡馬だった。ブライアンズタイムがいたからこそ日本の競馬は一層豊かなものになったと、本当にそう思う。死ぬ直前まで種付けをこなしていたというのも、いかにも“タフマン”ブライアンズタイムらしいエピソードだ。ここしばらく産駒はダートを主戦場としていたが、昨年後半にはレインボーダリアがエリザベス女王杯を勝ち、スカイディグニティも菊花賞で2着、“大一番でのブライアンズタイム”の復活に快哉をあげていたところに届いた残念な訃報だった。


ブライアンズタイムについてひとつだけ付け加えれば、リボーの凄味をあらためて印象づけた、ということだろう。母の父はリボー直仔のグロースターク。母方にリボーが入る種牡馬には他に、フォーティナイナーやデインヒルなどがいるが、いずれも種牡馬の父としても大成功しているのは周知のとおり。リボーの破壊力は確実に受け継がれていく。ブライアンズタイムもタニノギムレットやマヤノトップガンらが後継としてがんばっているが、もしブライアンズタイムが北米で種牡馬入りしていたら大ブレイクしていたのではないか。チンタラした日本の競馬以上にリボーの血が活きたのではないかと思うのだが。


そんなブライアンズタイムがオークスに送り込んできたのがリラコサージュだ。芝の新馬、未勝利を勝てず、ダートに回って2戦目で初勝利をあげて挑んだフラワーCが3着。続くデビュー6戦目のスイートピー賞はインの好位からきっちり差しきった。このときの上がりが自身最速の33秒9、しかも馬体重はプラス14キロ。400キロそこそこのこの馬にとっては大きなプラス要素だし、なにより叩いて叩いて破壊力を増してくるブライアンズタイムの上級馬特有の上昇曲線を描いているのがいい。若い女の子が舌をベロベロさせながら走るのはちょっとアレだが(苦笑)。全姉には芝ダート問わずオープン、重賞で活躍したレディルージュがいる。


もう1頭はサクラプレジール。父サクラプレジデント、そうして母の父がブライアンズタイム。フラワーCを勝っての参戦だが、そのフラワーCでは前述のエバーブロッサムを、さらにはリラコサージュを破っている。この馬については以前この欄でも書いたので繰り返さないが、血統的には“名門サクラ・ブランド”の、まさに結晶だ。近親にサクラチトセオー(天皇賞・秋)、サクラメガワンダー(金鯱賞)ら。名門メジロが去り、シンボリ、トウショウもいまひとつ精彩を欠く昨今、サクラの復権をこの馬に託すのはセンチメンタル過ぎるかもしれないが、ロマンが現実になるのも競馬だ。


坂を上がって逃げ込みをはかるティアーモに忍び寄るサクラプレジール、さらに外から並びかけるリラコサージュ。そして、怒濤の追い込みをかけるディープインパクト軍団……ゴール後、「な? 死んだ種馬の仔どもは走るって言っただろ?」と、うそぶいてみたいのだが。


お付き合いいただいてきたこのコーナー、ぼくの担当は今回で終了です。長い間ありがとうございました。いいオークスを、そしてダービーを。

◎大越正実…出版社勤務時代はながく音楽専門誌の編集長をつとめ、その後、事典、音楽・競馬・絵本などの趣味・実用書、法律書などの雑誌・書籍を編集/執筆。現在はフリーのスチャラカ編集者/ライター。『田端到・加藤栄の種牡馬事典』(東邦出版)は、絶賛発売中。


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