田端到・加藤栄の種牡馬事典 2013-2014
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露払いは3月23日の毎日杯。キズナはそれまでのもどかしいレースぶりとはうって変わって素晴らしい切れ味でダービーへの道を開いた。


翌日の高松宮杯。ロードカナロアは遠征帰りうんぬんの外野の声をあざわらうかのような磐石のレースぶりで勝利。


翌週の3月31日、大阪杯。ショウナンマイティは怪童オルフェーヴルには及ばなかったものの、しっかり仕事をして2着。


とどめは翌週だ。4月6日のニュージーランドTはエーシントップが余裕のレースぶりで勝つと、翌7日の桜花賞では、アユサンが馬場の真ん中を突き抜けて勝利。


いや、すごい。血統好きの方々なら、これらの馬たちのキーワードを、もうお気づきだろう、ストームキャットである。エーシントップ(父テイルオブザキャット、その父ストームキャット)を除いて、他の4頭すべて母の父がストームキャットになる。


こうした傾向はなにも重賞においてばかりでなく条件戦においても顕著で、JRAのリーディング・ブルードメアサイアー・ランキングで、ストームキャットは大王サンデーサイレンスには離されているものの、ブライアンズタイムやトニービンを差し置いて、なんと2位につけているのである(4月15日付)。アーニングインデックスは3.02。これは一定数以上の産駒がいる種牡馬のアーニングとしては破格だ(サンデーサイレンスは1.20)。母父ストームキャット、恐るべし、である。


ストームキャットは北米で走り、2~3歳時に8戦4勝。ヤングアメリカSGⅠ勝ちのほか、ブリーダーズカップ・ジュヴェナイル2着がある。とりたてて大騒ぎするほどの実績ではないが、これが種牡馬となると大ブレイク。“アイアン・ホース”ジャイアンツコーズウェイ(サセックスSGⅠなど5連勝を含むGⅠ6勝)、キャットシーフ(ブリーダーズカップ・クラシックGⅠ)、ブルーグラスキャット(ハスケル招待SGⅠ)、先述のテイルオブザキャット(キングズビショップSGⅡ)など、代表産駒を挙げていったら、それだけで紙幅が尽きる。日本にも直仔のヘネシー(産駒にフェブラリーS勝ち馬サンライズバッカス)、タバスコキャット、スタチューオブリバティらが導入された。2000年代初頭には種付け料が北米最高額の50万ドル(当時のレートで6000万円)をつけ、話題となった。


そしてストームキャットがすごいのは、それらの産駒が種牡馬としても成功し、さらに勢力を拡大していること。まさに“サイアー・オブ・サイアーズ”。ストームキャット系は欧米のノーザンダンサー系の最大勢力のひとつとなっている。


ストームキャットは父ストームバード(その父ノーザンダンサー)、母の父セクレタリアト、2代母の父にクリムゾンサタン。セクレタリアトはアメリカの英雄で、直父系は途絶えたが、エーピーインディやゴーンウエストらの母系に入って爆発力を伝えている。ロゴタイプの2代母の父リズンスターはセクレタリアト直仔。クリムゾンサタンは、日本関連でいえばダイワメジャーやダイワスカーレットらのスカーレット一族の祖、スカーレットインクの父。ピーターパンからドミノに遡る異系の父系。


日本で走ったストームキャット直仔というと、ニュージーランドTを勝った、というよりジャパンカップダートやフェブラリーS各2回を含め、GⅠ2着9回という迷記録で知られるシーキングザダイヤ、さきたま杯を勝ったゲイリーイグリットの名前が挙がるぐらいだが、これは先述したようなわけでストームキャット産駒の良血の牡馬はとんでもない高額で日本には導入されなかったことと、レースぶりがスピードはあるもののおおむねワンペースで淡白な馬が多かったため、緩急のきつい日本の競馬になじまなかったためだろう。


ところが、そのスピード能力が母方に入って見事に活かされ、このブレイクを呼び込んだ。“母父ストームキャット”というと、これまで「ファレノプシス(桜花賞)とメイショウボーラー(フェブラリーS)」と、ずいぶん昔の馬の名前を挙げてきたものだが、それがなぜいまこのブレイクなのか、理由は定かではないが、きっと生産者の方々がノウハウを掴んだのだろう。今年3歳のディープインパクト産駒のうち、先述のアユサンやキズナら、8頭が母父ストームキャットというのは、明確な意図を感じることができる数字だ。


こうした流れに乗るのは博打の鉄則だ、で、迎えた皐月賞。いましたね、母父ストームキャット、インパラトール。……うーむ……。

◎大越正実…出版社勤務時代はながく音楽専門誌の編集長をつとめ、その後、事典、音楽・競馬・絵本などの趣味・実用書、法律書などの雑誌・書籍を編集/執筆。現在はフリーのスチャラカ編集者/ライター。『田端到・加藤栄の種牡馬事典』(東邦出版)は、絶賛発売中。


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